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地球温暖化の国際交渉をフォローしたいところです


by togura04

日経と朝日の新聞社説

が出ていました。全文掲載しておきます。
日経社説1 低炭素革命にふさわしい中期目標を(6/7)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090606AS1K0600106062009.html

 ドイツのボンで12日まで地球温暖化防止の次期枠組み交渉が進められている。詰めの段階に入った交渉で各国が注視するのは日本の中期目標だ。国際社会が求めるのは「野心的目標」。麻生太郎首相の10日の決断では低炭素革命の決意と交渉主導の意志を鮮明に示す目標を求めたい。

 2020年までに温暖化ガスの排出をどこまで削減するかを示す中期目標は、1990年比で4%増から25%減まで6案ある。世界環境デーの5日に開かれた関係閣僚の会合でもどれに絞るか結論が出ず、麻生首相の政治決断に委ねられた。

 6案への意見は様々だ。日本経団連は4%増案を支持しているが、経済同友会は7%減案を支持。温暖化防止に積極的な企業には15%減を支持するところもある。高い目標でイノベーションを誘発すべきだと主張する企業もあり、産業界も4%増案支持ばかりでない。

 高めの目標の支持も広がりを見せている。与党でも公明党は斉藤鉄夫環境相の主張する15~25%減の考え方を支持し、有力視される7%減案での落着をけん制している。温暖化防止に熱心な石原慎太郎東京都知事ら関東知事会も15%以上の削減を政府に迫っている。

 中期目標は単純な数値選びではない。2100年に産業革命以来の温度上昇を2度以下に抑えるという理念を日本が共有するのか。先進国が先に高い目標を示すよう主張する大排出国の中国やインドに対し、排出抑制目標の設定に誘い込む意志があるかどうか。理念も国際的な指導力も問われる。

 日本は50年までに排出量を60~80%削減すると国際公約している。低炭素革命も掲げ、環境立国も唱えている。それとの整合性を考えれば、温暖化防止の意欲、責任感のあふれる中期目標を決断する必要がある。意欲、責任感が読み取れる目標なら、交渉で一目置かれるが、そうでなければ発言力は弱まるだろう。

 省エネが進む日本には効率を誇る傾向が強い。だが、自らを過信し努力を怠れば優位はすぐに崩れる。排出削減を強力に進める欧州は省エネ技術で日本に迫り、一部分野では逆転との説もある。日本がおごっていれば20年には抜き去られてしまう。

 温暖化防止に消極的だった米国では自動車の低燃費にインセンティブが働かず、ビッグスリーが競争力を失って無残な経営状態に陥っている。挑戦心が乏しければ経済も社会も活力を失う。低炭素革命を日本経済の活性化のテコにするには挑戦心をかき立てる中期目標が必要だ。




日経社説2 見識問われる排出削減目標(5/22)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090521AS1K2100121052009.html

 2020年までに温暖化ガスの排出をどれだけ削減するか。地球温暖化防止の次期枠組み交渉で日本が示す中期目標の策定作業が大詰めを迎えている。温暖化防止の気概が見えぬ目標では国際社会が日本を見はなし、交渉で主導権を握れない。策定では日本の見識が問われる。

 政府が検討中の中期目標は1990年比で4%増から25%減まで6案ある。すでに意見公募は終わっており、首相直轄の懇談会などで議論して最終的には麻生太郎首相が6月中旬に決断する予定だ。

 政府案に対し、産業界は総じて低めの目標支持を表明している。例えば経団連は4%増の案が望ましいとの意見だ。斉藤鉄夫環境相は「日本がそんな目標を出したら世界の笑いものになる」とし、この案に反対する。

 京都議定書は日本に90年比で6%の排出削減を課している。削減幅が6%以下ならこれを帳消しにし、排出増を求める目標だ。環境相は削減幅が6%以下の目標では「国際社会で日本の地位をおとしめる」とも強調している。野心的目標を求める国際社会では7%減の目標案でさえ「不十分」との声も出ている。

 次期枠組みでは大排出国の米国、新興国の中国、インドなどに何らかの排出目標を課すことが重要だ。米国のオバマ政権は交渉での指導力発揮を表明、低燃費自動車の普及など温暖化防止に前向きだ。だが、中印は先進国が高い削減目標を示すのが先決とし、様子見の構えだ。

 日本が低い目標を示したら、中印に言い逃れの口実を与えかねない。日本は国際的批判の矢面に立たされる。中印を引き込むためにも説得力のある目標は必要だ。

 目標設定ではもちろん、各国の公平性が重要だが、独りよがりの指標や仮定をもとに削減配分を主張しても国際社会を説得できない。政府案では排出削減での「限界削減費用均等化」の考え方を示しているが、やや内向きの議論なのが気になる。

 世界は低炭素社会に向け産業構造や社会の変革に動き出している。環境立国を掲げる日本が世界で環境ビジネスを優位に進めるには常に先を走り排出削減で手本を示す必要がある。志の低い目標は商機も失う。
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 さすがに経済紙としては、ビジネスのことを最優先で考えています。

 高い目標を掲げられると困るのは、経済産業省や経団連「官」僚のメンツだけなのではないでしょうか。

後日記:
5/24朝日社説:温室ガス削減―日本の決意を中期目標に
http://www.asahi.com/paper/editorial20090524.html?ref=any#Edit1
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 地球温暖化に立ち向かうため、2020年までに温室効果ガスの排出を90年比でどれくらい減らしていくのか。排出削減の中期目標に関する議論がヤマ場を迎えている。

 麻生首相が来月、最終決断するのを前に各地で意見交換会が開かれ、電子メールで国民の意見も募集された。政府の検討委が示した6案について、意見がまっぷたつに割れている。

 経済への影響を抑えたい産業界は六つのうち最も緩い「4%増」を、温暖化防止の実効性を重んじる環境NGOは削減幅が最大の「25%減」を強く主張するという構図である。

 ただ、ここへきて産業界の内部にも微妙な意見の違いが見えつつある。日本商工会議所や経済同友会は、日本経団連などが求めている「4%増」という案にこだわらない姿勢を示した。

 経済同友会が妥当としている「7%減」という案は、経済産業省の審議会がまとめた長期エネルギー需給見通しがもとになっている。省エネに積極的に取り組めば実現可能な水準だ。この辺を落としどころに調整が進む、との見方が広がっている。

 言うまでもなく、国内で意見を調整して決めた数字を、日本の中期目標として単に掲げればすむわけではない。京都議定書に続く温暖化防止の次期枠組み交渉で、国際的に受け入れられるものでなければだめだ。

 その交渉の大前提となっているのが、科学的な考え方である。

 地球規模の危機を避けるには、産業革命前からの気温上昇を2度以内にとどめなければならない。そのためには先進国全体で90年比25~40%の温室ガスを削減する必要がある――。

 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告をもとに、国際社会はそう認識している。各国の理解を得るには、これを踏まえた中期目標とすることが最低条件だ。

 「7%減」は土台にすぎないと考え、国内の自然エネルギー拡大や途上国への援助など幅広い手段を想定して削減幅をさらに上積みしていくべきだ。経済大国の責任を果たすためにも意欲的な目標を掲げる必要がある。

 日本の姿勢は次期枠組みの成否も左右しかねない。世界の排出量の4割を占める米国と中国抜きの次期枠組みはありえない。日本の意欲的な目標で両国に大胆な削減努力を促すべきだ。

 目標を高くしすぎると産業や生活に悪影響が及ぶ、という懸念を産業界はぬぐえないかもしれない。だが、削減努力は技術革新を促し、低炭素社会を呼ぶ。そんな発想の転換が必要だ。温室ガス削減で世界の先頭に立てば、競争力の確保にもつながる。

 低炭素社会づくりの理念と決意を込めた中期目標を掲げることを、麻生首相に求めたい。
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by togura04 | 2009-06-07 11:48 | 国内方針