人気ブログランキング | 話題のタグを見る

地球温暖化の国際交渉をフォローしたいところです


by togura04

NHK番組「15%削減、暮らしを変えられますか?」

 6/20土曜の晩に、NHKの対話風番組『日本の、これから』「15%削減、暮らしを変えられますか?」がありました。
 麻生首相が発表した日本の中期目標05年比15%削減を国民が受け止めて、果たして暮らしを変えられるのか、についての議論のようでいて、でもやはり各界代表の発言が目立った番組でした。

 (コメント:ほんとはねー、日本政府は気候変動枠組条約の西暦2000年目標(90年レベルでの安定化)も、京都議定書における目標(2010年頃に90年比6%削減)もないがしろにして温暖化対策を怠ってきたから、2005年の大幅増加の現状があるのですがねー。
 「どうして今すぐ、環境対策をやらなくちゃいけないのか?」という切実そうな女性の発言がありましたが、「これまで延々と先送りしてきたから」なんですよ。「さらに先送りしたら、ほんとうに血反吐を吐くような削減を後で始めても追いつかないから」なんですよ。
 その大幅増加の2005年を基準年とすることでこれからの削減を大幅に見せかけようという、転んでもタダでは起きないという根性も対外的な恥さらしです。)

 全部で4つの質問へのリアルタイムアンケート結果が意味があるかと思います。視聴者からの回答者の総数は出てきませんでしたが。

---
質問1:温暖化対策のためにあなたは暮らしを変えられますか。
1.変えられる。2.難しい。
会場  11人:10人 (中央の5人を挟んだ左側と右側のひな段でちょうど別れています、そういう配置にしたのでしょう)
視聴者 49%: 51%

質問2:あなたは環境に優しい商品を積極的に購入しますか?
1.積極的に購入したい 2.あまり購入したくない
会場 左の段から2名が2を選び、右の段から3名が1,2の両方を選びました。
視聴者 40%: 60%
 (コメント:これだけ否定的な反応が比較的多数を占めました。まあ健全な反応だといえます。消費意欲を刺激する今の政策ではなくて、みんなが環境に悪い商品は買わない消費者になってください、という趣旨のインセンティブとして設計すべきでしょう。)

質問3:(2020年までに発電容量20倍を達成するために、太陽光発電の買い取り価格を2倍にするために、一般消費者の負担金を数十から100円上乗せする新制度に関連して、)
 環境対策コストを皆で負担することに納得できますか?
1.納得できる 2.納得できない
会場 左の段から1名が2を選びました。右の段からは2名が1を、2名が1,2の両方を選びました。
視聴者 49%: 51%

 (コメント:買い取り制度の下では、実際に設置できる家庭が優遇されてしまう、という反応があったのには驚きました。パイオニアやアーリーアダプターを評価しない社会だということでしょうか。 それに、買える家庭が優遇されてしまうのは、むしろ家電商品のエコポイントやエコカー減税という形で補助金を税金から出している制度の方であって、太陽光の場合は支払われるのは地域社会に供給される恩恵の部分だけだというのに、大きい方の問題点には気がつかないのでしょうか?)

質問4:”低炭素革命”で日本社会は良くなると思いますか?
1.良くなると思う 2.良くならないと思う
会場 左の段からは全員が1番か? 右の段からは1名が1を、2名が1,2の両方を選びました。
視聴者 48%: 52%

司会:いずれもものすごく拮抗している。こんなことはこれまでこの番組で初めてだ。

 (コメント:なんであれ、革命が嫌いなんでしょうねー。「政府が何を温暖化対策としてやってくるのか、先が見えない」という不安を出演者が口にしていました。確かに政治的理念に基づいて、すべきこととすべきでないことの区分けが全然付いていないので不安感が大きいのでしょう。)

 そのほか、面白いと感じた発言を紹介しておきます。
---
金子勝 ”まず中小企業、この間苦しかったのは、100年に一度の金融危機が一つあったんですが、実はエネルギーの上昇がすごかった、原材料が。デフレな状態に原材料があがった。
 例えばすごく保守的な、国際エネルギー機関とかケンブリッジエネルギー研究所っていうところでさえ、2012年には石油が高騰すると、日本石油連盟でさえそういうことを言っている。つまり、石油が産油国とか新興国とかがどんどん消費しているので、これから景気が多少でもよくなると、たちまち石油の値段が高騰してくるんですね。
 そういうエネルギー効率?をいかに吸収?するか、という国の戦略がないと本当の意味で中小企業はもう一発喰らってしまう、という危機でもあると思います。”


斉藤環境大臣 ”今、2020年で一次エネルギーの20%は再生可能エネルギーで作ろう、というのが我々の方針。”
金子 ”家庭だけでそれは賄えない?”
斉藤 ”それは風力それから、庁舎、公の施設での太陽光も組み入れていかなければならない。”
金子 "そうすると、電力会社も、大量に買わないと無理ですよね。”
斉藤 ”はい。”

司会 ”負担の話、電力料金だけじゃないんですね。CO2を減らそうとしますと、低炭素社会を作ろうとしますと、どうしても石油とか、それから石炭とかのエネルギーの値段が上がります。そうすると、輸送とか製造のコストが上がって、ものの値段が高くなるんですね。従って可処分所得が43000円圧迫される。そして光熱費が高くなる、33000円高くなる。足し合わせますと大体年間7万6千円圧迫されるという試算が日本政府の試算で出ている。”
金子 ”経済産業省と環境省で違っているんです。”
斉藤 ”日本版グリーンニューディールの中で、これらの環境施策を遂行することによって、環境分野で140万人の雇用を280万人にする、2020年までです。それから経済規模、いま70兆円なんですが、これを120兆円にする。このような試算が、これは政府の試算として、経済産業省も認めた数字として、出ております。今、さきほど紹介された数字は、今回検討の中期目標検討委員会の中で、モデル、コンピュータモデル分析をしたものなんですけれど、ここは基本的に、今の産業構造が変わらないという前提の下での計算です。
 さきほどの雇用がこれだけ増えるというのは、この環境施策によって、これから産業構造が変わっていくということを考慮に入れた数字です。でこの差が出てくると思うんです。これも、可処分所得や光熱費で7万円増えると、言っておりますけれども、あのモデル分析をよーく勉強しますと、これから2020年までに経済成長で、100万円可処分所得が増える。その増える中で、経団連が推奨していた選択肢1ですね、その1の場合に比べて、7万円所得が減るということですから、モデル分析では、経済成長した中で、ちょっと減るというのが今回のモデル分析の結果なんです。今回そういう意味では、中の負担部分だけがあまりに強調されていると私には思えてなりません。”


司会 ”日本エネルギー経済研究所の試算では、2008年は減少(ほぼ2000年と同じレベル)、2009年は90年のレベル(11億トン以下)にまでぐっとCO2排出量が減る。(写真)
NHK番組「15%削減、暮らしを変えられますか?」_f0203461_17584165.jpg
(注:景気悪化の影響は大きいということですね。09年の11億トン以下の数字は2005年の13億トンのほぼ15%減となっています。つまり今年、2009年の実績で横ばいが続けば、2020年中期目標はただちに達成されることになります。如何に産業界のシェアが大きかったのか、が分かります。)
(そういえはど、昔は「今後の国内政策とポスト2012交渉について」でこんなことを書きました。
「国内対策がとられなければ、政治無策が続くわけですから、ピークオイル問題が2008~2012年の間に炸裂することで、パニック的に産業界が大規模な生産停止をすることにより結果的に京都議定書の目標が達成されることに期待するしかないでしょう。(もちろんその場合は過剰達成するでしょうが非常に面白くない予想です。)」)

金子勝 ”一つはなぜ今か、ということですが、さきほどの説明では、再生可能エネルギー価格が普及するとエネルギー価格が上がるとなっているんですけど、多分、新興国および産油国の消費動向を考えると、石油価格が相当上がる可能性を持っていると、そうすると実はもうカバーできないと。
 そういうときに、たとえば中小のトラック業者とか輸送業者といった人たちに、非常にハイブリッドカーとかそういったものを、たとえば環境税をかけたらその税金がそこへ行くような形にして、燃費コストを下げてやれば、誰もが倒れない形で、広く有利にCO2を減らせるというような、そういう工夫が一つ大事だと思います。
製鉄業の場合は排出量取引があると相当苦しくなっちゃうんですけれど、環境税とか、実はデンマークとかは環境税を重くする代わりに法人税を軽くしたり、ドイツは社会保障の負担を軽くする代わりに環境税を重くしたり、という形で負担のバランスを考えながら、時間をかけてCO2を削減する方向を追及すればいいと。
 いま日本で最大問題なのは、当面問題なのは石炭火力の発電なんですよ。これはそうとう大きいので、こういう部分をどうやって解決、まずは再生可能エネルギーに代えて、という順番をしっかせさせていくのが大事。”
司会 ”取り掛かるのは今?”
金子 ”今。景気がいくぶん回復した時、他の国がみんな再生可能エネルギーに行っているのにハイブリッドカーや電気自動車に行こうとしているのに、日本だけがエネルギーコストの高さを吸収しなくちゃならなくなっていく。”
---
 金子氏はそうとは明言しては言いませんでしたが、明らかにピークオイル論を念頭において語っています。
アラビア石油取締役の庄司氏はこの石油枯渇懸念の論点について司会に振られても答えませんでした。庄司氏はどう答えるべきだったでしょうかねえ。
by togura04 | 2009-06-21 17:50 | 国内方針